こんばんは。
梅雨入りしましたね。今年は4月以降もここまでは肌寒い日が多い印象ですが、皆様体調にお変わりはないでしょうか?私の体調は、そんな日々に加え、妙に寒い事務所の環境に翻弄されております。
さて、前回に引き続き、「設計者を選ぶ②」としてお送りして参ります。
本日は、「建物の性能」に焦点を当ててます。
広告等でよく目にする ”なんとなく意味は分かる、詳しくは分からない”といった言葉があったりしないでしょうか?
皆様が検討される上で、もう少ししっかりとした判断ができるよう、そんな言葉の意味を解説するような形でお伝えできればと思います。
さっそくではありますが、要素を列挙。
<建物の性能>
① 構造
② 火災時の安全
③ 耐久性
④ メンテナンス性
⑤ 断熱・気密性
⑥ 居住性(住みやすさ、居心地、バリアフリー等)
⑦ 環境(空気・音・熱・光・視)
<設計者(会社)の評価>
⑧ 設計・間取の自由度
⑨ デザイン性
⑩ コスト(価格)
⑪ 会社の安心感(信頼性)
⑫ きちんとした施工
⑬ アフターサービス
「設計者を選ぶ」上で、私のまとめ方で語弊がないように建物の性能以外の項目も加えさせてもらいました。「家を建てるための検討項目に”あのポイントが含まれていない”と思われるのでは?」と及び腰であることも付け加えます。。
言い訳がましいですが、私が考えるに設計者を選ぶポイントはこういった感じでしょうか。
前回もお伝えしているように、最終的に「何を重視したいか」は千差万別、今日も判断ポイントを見つけるような意気込みで見て頂ければと思います。
「建物の性能」とした内容は、まとめ方は異なりますが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度で定められている評価項目と概ね同じです。このブログの作成に当たって、国土交通省のhttps://www.mlit.go.jp/common/000129267.pdfを参考にもさせてもらっています。注1
それぞれの項目でどういった見方をすれば良いか簡潔にまとめてみます。
① 構造
・地震、風、積雪に対して適切に設計されているか?
・地盤改良は必要か?
・敷地地盤に対して適切な基礎構造が採用されているか?
・地震については、耐震、免震、制振のどのタイプか?
耐震:強い構造(強度)で地震に耐える
免震:地震の揺れが住宅に伝わりにくくする
制振:特殊な機構で地震の揺れを制御する
地盤改良は必ずしも必要ではありません。初期の見積もりには、「要るかもしれないから入れておけ」という感じで金額が計上されることは多々あります。ぜひ確認してみてください。
地震に関しては耐震性という言葉を聞かれたことがあるかもしれません。最近では、免震住宅、制振住宅と呼ばれるものも出てきています。「耐震、免震、制振」の3つは、地震に対してそれぞれ異なるアプローチで地震の被害を減らす構造方法だと認識してもらえればと思います。
② 火災時の安全
・耐火性
・消防用設備の設置
専門的に耐火性を考えると、建物は建築基準法上で耐火建築物、準耐火建築物、防火建築物、その他の建築物に分類されます。火災に対する仕様は、耐火建築物が最も優れ、準耐火建築物、防火建築物、その他と続きます。仕様が良いほど金額もかかります。
これらは、建物が建つ敷地、建物の規模、建物用途等を基準に、その建物に求められる性能に適合させることになっていますので、要するに、家を建てる場所(敷地)から金額に影響しているわけです。
③ 耐久性
・建物の劣化軽減
木造の建物の場合、木材の腐朽、シロアリ対策について法律で使用できる木の種類や使用できる基準が定められています。
また、建築で使われる材料は、年数の経過と共に劣化してしまいます。ゆえに、いつまでも保証が効くものではありません。製品によっては「○年保証」と謳っているものもあります。基本的に保証が長く設定されている製品ほど仕様は良い=金額が高い、です。
④ メンテナンス性
・各所の清掃のしやすさ
・給排水、ガス、空調等の配管や配線の点検、補修のしやすさ
・換気扇、キッチン廻り設備等の点検、補修のしやすさ
洗面、キッチン等の清掃のしやすさは、設計段階で必ず確認される項目だと思います。材料選びで変わるところですので、特に変わった材料を選ばれる場合(例えば、モルタル系仕上等)は、よく確認された方が良いでしょう。
点検口は主に業者の方が配管や設備の確認のために利用されます。プラン上、そこには家電を置きたい、と思うような場所に点検口が設定されていないかは要確認です。
⑤ 断熱・気密性
・断熱性:冬は暖気、夏は冷気を外部に逃さないための性能
・気密性:隙間のなさ
省エネルギー性能に関わる項目。最近よく目にするとすれば「ZEH(ゼッチ)」という言葉に関連する内容です。
これらは省エネ性能を評価する指標のひとつで、評価が高いほど、省エネ性能は高くなります。
「省エネ」は、国・世界が施策として注目しているエネルギー関連の事業に直結するため、住宅を建てる場合も、一定の基準を満たすことで補助金が出ていたりします。(詳しくは、各自治体のホームページ等でご確認ください。)
一般に省エネ法と呼ばれる法律で、現在は住宅であっても、住宅の省エネ性能について、基準への適否(適合しない場合は基準クリアに必要な措置)についてお客様への説明が義務化されています。こちらも国土交通省のhttps://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou.htmlを参考にしております。興味のある方はご覧ください。注2
⑥ 居住性
・住みやすさ、居心地
・バリアフリー
・防犯 等
会社が採用する設計システム、設計者の経験や配慮が影響する項目だと思います。住みやすさや居心地は、室内環境も影響しますが、どのように開口をとると落ち着くか、建物外部または部屋内の人の視線に対する配慮、落ち着く天井高さ、合理的な動線等がプランにどう反映されているかを確認することになります。
絶対的な正解があるわけではなく、住む人・使う人が違えば、同じ敷地だとしても自ずと変わってくる内容です。
プラン検討の際は、住宅に求めていること(どんな過ごし方をしたいか、デザイン性、将来設計等)を設計者の方によく伝えることをオススメしますし、要望がうまく反映されるかは、設計者選びの判断ポイントともいえます。
⑦ 環境(空気・音・熱・視)
空気:換気計画、選定設備
音:遮音性
熱:日射=ガラスの選定、温度=壁、床、天井の断熱計画
視:作業環境に必要な照度、照明の明るさ(色温度等) 等
いずれも住みやすさの点で⑥の「居住性」と関わりの深い項目と言えます。
空気環境を整えるための換気計画には、第1種〜第4種換気の種類があります。住宅での採用例が最も多いのは第3種換気(自然給気、機械排気)です。近年では、省エネ住宅とするために第1種換気(機械給気、機械排気)を採用するメーカー・設計者もあります。
※ちなみに、第2種換気(機械給気、自然排気)、第4種換気(自然給気、自然排気)です。
音については、例えば緩和したい音(低音又は高音等)の種類に合わせた材料選定をすることで遮音性が変わります。
熱については、例えば使用するガラスの種類によって日射をコントロールすることが可能です。省エネ的には「Low-Eガラス」がよく知られるようになりました。
視環境としては、採光や照明に関する内容です。自然光の入れ方、照明の色で暖色系・寒色系の好み、作業に適した明るさが検討できているかは判断ポイントといえます。
以上となります。できるだけ簡潔にお伝えすることを心がけたつもりですがいかがでしたでしょうか?
「構造」という言葉を見れば、地震、地盤、耐震、免震・・・等と判断できるポイントを養えてもらえていれば幸いです。
建物の性能と金額の関係も簡単ではありますが、参考にされてください。
繰り返しになりますが、「簡潔」を心がけ、細かな部分でお伝えできていない点は多々あります。ご質問を頂ければ回答したいと思いますし、設計中という方であれば、担当の設計者さんに聞いてみられた方が良いかもしれません。
設計者(会社)の評価に関しては、次回以降に回したいと思います。本日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
小田原
参考
注1 国土交通省 住宅の品質確保の促進等に関する法律 住宅表示性能の概要 2022.6.7
注2 国土交通省 建築物省エネ法が改正されました 2022.6.14
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